--01--  音が聞こえる     無機質で、冷たく、重く          生命の根幹にある本能が受け付けない音・・・・                  まるで"冷徹"そのものが愚鈍な慟哭をあげているような   硬く 鈍く 色無く     ただ作られるのを待ち、              ただ命令されるのを待ち、                       ただ決められた動きをし、                                ただ同じことを繰り返す                 そこには  意思もなく                      温もりもなく                          ただ錆びついていくのを座して待ち     ただ朽ちていくのを恋い焦がれる        そこには 躊躇いもなく             戸惑いもなく                             そこには 命もなく                                  愛もなく --02-- そこには、誰も、いない 私は機械が嫌いだ --03-- 【今日こそマジで決闘だ! 〜 POWER is STRONG】(虚、実を表裏上ぐ)  ラウンジカーの中は少し薄暗かった、照明が弱いのだろうか  しかしそんなことを気にしてる余裕は私にはなかった  一刻も早く疲れた身体を癒すため、私はソファのクッションに沈みながら  静かに、ゆっくりと、目を瞑った  瞼の裏に広がる闇は過去の記憶を次々と浮かび上がらせた  いい思い出、イヤなキオク  笑顔で暖かくなる頬、涙で冷たくなる頬  ずっと、遠くのことのように感じる・・・・・  しばらくそうしていると、遠くから足音が近づいてくるのが聞こえてきた  間もなくしてラウンジカーの入口が開かれ、誰かが中に入ってきた  私はすぐに目を開き、起き上がりながら入室してきた年上で澄ました顔をした女性に話しかけた    「・・・調子は?」 --04--  話し相手の彼女は車内の天井を見上げ、少し訝しげな顔をした後に  ふたたび澄ました表情に戻った    「・・・・照明が暗いわね」    「そうなのよ」  やれやれ、っと彼女は肩をすくめる      「まだ本調子じゃない、ってことね」    「ふーん」  いまいちハッキリしない答えだ   まだ何とも言えない状況だということなのだろう  彼女は一息つくと、入口近くのカウンターに設置してある機械を操作しだした  私はふと窓の外に目を移すが、映る景色は少し前に見ていた美景とは大違いであり  興味をそそるようなものではなかった  動いていない列車というのは何故か落ち着かない  かといって動いている列車が好きなわけではないのだが・・・    「何か食べたいものある?」  カウンターで機械を操作しながら彼女が聞いてきた  こういうことを聞かれたとき、私の答えは端的だ    「肉」 --05-- 【君が足りない世界】(古く噎せる記憶 〜 BEGAN)    「これって保存食?」  目の前の机に置かれたものを見て私は目を疑った  彼女が先ほど操作していた機械から肉汁が弾ける音を鳴らしながら  熱々のステーキが出てきたのだ    「違うわよ、出来立て」    「ふーん、なんでもあるのね」    「テクノロジーも、便利なものでしょ?」  この人は根本的にわかっていない  私はその便利さが嫌いなのだ    「紅茶もあるけど、なにがいい?」  彼女はまた機械の方に向かっていった  ステーキに紅茶?  ・・・まぁ別にいいか、特にこだわりもないし    「アールグレイのホット、何も入れなくていいわ」  私の答えを聞いて彼女は小さく鼻で笑った、失礼な奴だ    「無難でシンプルね」    「そういうのが好きなの」 --06--  その時、私の言葉に何かを思ったのか、  彼女はしばらくその場で固まった  数秒したあと、私の方に振り向いて尋ねた    「・・・・・ケチャップとか入れなくていい?」  あほか    「あのね、私、いちおう人間なんだけど?」    「冗談よ 一応聞いてみただけよ」  どういう意図での"一応"なんだか  彼女は再び機械の方へ向かった  ・・・なぜだろう、彼女の後姿からがっかりしている様子がうかがえる  私のつまらない舌が悪いというのか?    「つまんないの」  思った通りのことを言うその声は  何故か寂しく聞こえた --07-- 【蓮葉氷を跳ぶアリス】    「知ってる? 歴史の闇に葬られた皇族と国津神の話」    自分の分の食事とお菓子と飲み物を机に置き、  ソファに腰を下ろしながら彼女は問うてきた  突然何を言い出すんだ?    「・・・いくらでもありそうな話ね」    「じゃあ話すわね」  どうも話がしたいらしい、このお喋り好きは  ・・・しかし度胸があるというか、肝が据わってるというか    「そんな事話してる余裕が良くあるわね」    「ん〜、どうして?」  ・・・・直接的に言うのはよしておこう    「『現代の神隠し』 ・・・・今回の事件はあなたの身内も失踪したのに」    「まぁね、けどどうせ無事だから大丈夫よ?」  どうしてそういうことをサラっと言ってのけられるのだろう?    「貴方の根拠の無い自信に関してはいつもながら惚れ惚れするわ」    「褒めたって何も出ないわよ? チョコクッキー食べる?」  自分の分のチョコクッキーをこっちに差し出してきた、いらない    「けどあなたの言うとおり、どうせ天才さんも一緒にいるだろうから     心配いらないかもね」 --08--  私はそう言いながらクッキーを無視し続けた  やがて彼女はムスっとしながら、それをそのまま自分の口に運んだ   「そういうこと ・・・しかしまだこの世にいるのかしらね?」  ・・・・・・・・  ・・・この人は確か頭が良いはずなのだが、  自分の言ってることが分かってないのだろうか?    「・・・不吉な事をアッサリ言わないでよね」    「別に不吉じゃないわよ? この世界とは別のところに居るかも、ってことよ」  またそういう話か・・・  辟易するものの、どうせ話す話題もないし、仕方ないから付き合ってやることにした    「またその話? 相変わらず荒唐無稽なこと言うわね、影響されすぎよ」  彼女は首をかしげた    「博士のこと? 別に博士が言ってることは根拠が無いわけじゃないわよ     ただ言ってる事が難し過ぎるのと、前提としている予備智識が多すぎるだけ」    「というより、未知なる理論を多様しすぎなのよ、燕楽玄鳥は」  燕楽玄鳥の名を聞いて彼女の顔が少しほころんだ、鬱陶しい    「博士の書く論文・・・じゃなくて"メモ"は面白いわよねー」    「さっき見たけど、私にはただの真っ黒な紙にしか見えなかったわ」    「丁寧に文字が凄く小さく書いてあるから視力も鍛えられるわね」  盲目者には何を言っても無駄なもの    「それで鍛えられるのは視力じゃなくて忍耐力ね」  私の皮肉も、彼女には届かないだろう  あぁ、本当に鬱陶しい  ・・・・・・・・・・・・・・なにが? --09-- 【无現里へ】(連縁无現里スタッフロール・ボツ曲)    「それでね、それとは関係ないんだけど、     この世界にはまだ未知なる地があるんじゃないかって」  目の前の科学者もどきは非科学的なことを言う    「いまどき未開の地ねー まぁありえなくは無いけど・・・     飛行機や衛星だってあるんでしょ?」    「そんなものでは見つけられないところにあるの」  ?  言いたいことがいまいちわからない    「地中や海中都市とかの事を言っているの?」    「まぁそれも面白い話だけど、ちょっと違うわ」    「えー つまらないの」  彼女は少し驚いた顔をした    「あなたってそういうものに対しては好奇心が働くのね」    「別に、歴史的に関係あるものには少し興味があるだけよ     ・・・それで、他にどこにあるって言うの?」  少し間をおいてから、彼女は両肘をついて手を顔の前で組み、少し神妙な顔つきになった    「異世界・・・・・遥か昔、ヒトと袂分った種族の国」  知っている話だ    「・・・『人外の国』 燕楽玄鳥が以前に調べていた話ね」    「その"以前"ってのは失踪する直前の話なのよ」 --10--  彼女は目を閉じていた  ようやく彼女の言いたいことが分かった    「・・・なるほどね、"手がかり"ってわけね」  彼女は再び目を開き、私のほうを見た    「私たちの目的地は、もしかしたらその『人外の国』かもしれない」    「・・・・・」  私の反応を待たずに、彼女は言葉を続ける    「人外が友好的とは限らない、危険な旅になると思う     それに人外の国は異界にあると言われているから、     行ったら最後、二度と戻ってこれないかもしれない」  言われなくても理解している、っということは彼女も承知の上で言っているのだろう  これは準備と確認だ、心の    「さらに言ってしまうと、あなたが行ったところで     何も成果があげられないかもしれない、     行かなくちゃいけない義理だって、実のところはないでしょ?」  確かに、無意味かもしれない、義理もないかもしれない    「リスクは高く、リターンは未知」  彼女は組んでいた手を解き、私の手の上にその手を重ね、私の眼をじっと見た    「それでも行く?」  分かれ道   選択の時 --11--  私の答えを聞いた彼女はしばらく黙ったのち、ため息をつきながら顔を伏せた  しばらくの間、私たちは声も発さず、動作もせず、なにも音すら立てなかった  そのため、話してる時は気にならなかった列車の無機質な動作音が、  やたらと大きく聞こえ、私たちの世界を包み込む  やがて彼女は顔をあげると大きく深呼吸をして、少し微笑みながら言った    「仕方ない、付き合ってあげる」  そう言うと彼女は立ち上がり、車内を出る扉に向かった     「一応、私はあなたの後見人だしね」  彼女は小さくそうつぶやいた  ・・・あなただって分かってるはずだ  付き合ってあげてるのは私のほう  私が行かなくちゃ、どうせあなたは一人で行くだろうからね  まったく・・・・・手のかかる人だ --12--  そんなことを思いながら、ラウンジカーを出ていく彼女を見送っていたが  その背中は、何故か悲しく見えた  そうだ、彼女も失った人なのだ  必死に、懸命に、精一杯  探しているのだ  新たな手がかりを  考えているのだ  糸の先の真実を  願っているのだ  未知に答えがあることを  私も今回の旅に期待がなかったわけではない  ただ私は自分の気持ちに一区切りつけたかったのだ  その気持ちが決心を後押しした  思いっきり腕を伸ばしても届かないのならば、それで諦めがつく  行動の臨界点に達さずに、後悔したくはなかった  やるからには、星をつかんで見せる  私たちの前に、レールは敷かれた --13--                                私に特別な力はないが 記したものを読み返せば たしかに過去に遡れる 過去の旅をしている時 たしかに過去と会話ができる 過去と会話をすることは たしかにおかしなことかもしれない だけどそこには たしかな幸せがあると思える --14-- 連 縁 偽 霊 簿 02 --15-- 頭寒足熱で熱暴走 鵐 頬赤 種族 魔法使い 能力 冷熱を司る的な能力 趣味 料理 キャンプ 読書 スポーツ 好きなもの バー ベキュー  カレー 液体窒素 ドライアイス 嫌いなもの ぬるいもの ややこしいこと 推定誕生日 04/07 --16-- 曖昧で紙一重な考古学者 鵐 黒巫鳥 種族 先史学者 能力 表裏を逆転させる的な能力 趣味 旅行 クロスワー ドパズル 好きなもの 考古学 宝物 現金 嫌いなもの 歴史 宗教 戦争 推定誕生日 09/06 --17-- 「混沌」の異名を持ち重力を自在に操る永遠なる皮相浅薄 クラウゼ(略称・偽名) 種族 面倒 能力 重力を操る的な能力 趣味 天体観測 謎の儀式 人間観察 好きなもの 宝石 シルバー 星 「知っている」者 嫌いなもの 愚かなもの 下等なもの 汚らわしいもの 推定誕生日 08/24 --18-- 不可解な袴 闡裡 鶴喰 種族 ヒト 能力 文字を操る的な能力 家禽を育種する的な能力 趣味 散歩 昼寝 好きなもの 无現里 嫌いなもの 弱いやつ 孤独 推定誕生日 ?????